本研究「時と意味一生の意味に関する現象学的分析の試み」は、「生きる意味」ないし「人生の意味」という、少なからぬ人々が哲学的思考へ参入する糸口であるにも拘わらず日本の専門的哲学研究では取り上げられることの少ない基本的問題について、そこで用いられている「意味」概念の時間論的分析を通じてこれに新たな光を投じることを狙いとしている。研究の初年度である平成20年度は、研究プログラム全体(省略)の第2部までに研究の重点が置かれた。ここでは、「人生の意味」という場合の「意味」が「連関意味」と名付けられ(研究計画段階では「一般意味」と呼んでいたものを改称)、すでに存在する非言語的意味に関する研究の諸説を参照しつつも、連関意味という独特な「意味」概念の本性の考察が、我々の言語的生活の中でのこの概念の使用の現場に立ち戻ってなされた。 本年度の研究では、すでに身近な出来事や行為の「意味」に関して得られていた成果が「生きる意味」や「人生の意味」へと拡大され、そこで当然問題になってくる「死」という人生の限界を超えて意味が確保されるために、個人の生きる意味から社会集団の歴史における意味という領域へ意味概念の検討が拡大された。そこでは個人の人生が社会集団の歴史において意味づけられるにはどのような条件が必要とされるかが検討された。研究成果はすでに、論文「人はどの程度『歴史』を必要とするか」(東北大学大学院国際文化研究科ヨーロッパ文化論講座発刊「ヨーロッパ研究」第8号、2009年3月公刊予定)に纏められ発表される予定であるが、諸般の事情により公刊が遅れている。
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