研究概要 |
アレクサンダー・ゴットリープ・バウムガルテン(Alexander Gottlieb Baumgarten)の『形而上学』(Metaphysica,1793 Halle.2.Auflage,1743.3.Auflage,1750.4.Auflage,1757(In:Kant'sgesammelte Schriften,herausgegeben von der Koniglich Preussischen Akademie der Wissenschaften Bd.X VII).5.Auflage,1763.6.Auflage,1768.7.Auflage,1779(Reprint:Hildesheim 1973).)第3部「心理学」の「経験的心理学」(Psychologia Empirica)の中の「欲求能力」(facultas appetitiva)を論じたテクストの検討を、弟子のゲオルグ・フリードリッヒ・マイアーの独訳および解説本を参照しつつ進め、訳注を作成した。 同時に、特に「欲求の理性的根拠」すなわちBewegungsgrundの概念をめぐって、バウムガルテンと1770年代の『道徳哲学講義』におけるカント、そして1785年以降のカントの思想を比較検討して、「理性を介する」という意味で「客観的」なものであれば何でもBewegungsgrundとしたバウムガルテン『形而上学』から、「命法」となるもののみをそれとした1770年代のカント『道徳哲学講義』を経て、厳密には唯一「道徳法則」(人間にあっては「定言的命法」)だけを「理性的」(純粋な意味で)とする批判期のカント実践哲学にまで至る発展の必然性を明らかにした。
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