21年度の目標及び実施計画のすべてが実現したわけではないが、「研究実施計画」の中核は満足のいく仕方で達成できた。それは「プラトンの『ゴルギアス』と『国家』の抱える問題点を、哲学のテキストとしてのみ分析するのではなく、B.C.430-399年頃のアテナイの政治状況をとおして、プラトンとヘロドトス・トゥキュディデスとの関係を具体的に洗い出してみたい。そのことによって、哲学者プラトンが政治家ペリクレスのような人と、同じ貴族であるにもかかわらずまったく異なった考えと政治的行動を示した理由を探りたい。」というものであった。 図像的作業までには手が回らなかったが、プラトンとB.C.430-399年頃のアテナイの政治状況を、ヘロドトス・トゥキュディデスのテキストやその他さまざまな文献(哲学はもちろん歴史学の)を駆使して、誰もいままで試みたことがない仕方で描き出すことに成功した。それが「プレオネクシアとメテクシス-自然の正義とゼウスの正義」という研究論文である。 また、<プレオネクシア>という中心概念を通して、「研究目的」の一つの課題でもある、アリストテレスと、ロールズ・ヌスバウム・センなどの人間把握との関係を、明示することができた。
|