(1)西田幾多郎が所蔵していた、ジェイムズの著作とウェーバーの著作について、京都大学文学部図書室で調査した。(2)ウェーバーの比較思想の視座が西洋中心主義というよりむしろ近代西洋批判を含んでいたことをめぐって、考察の成果を拙稿「ウェーバー宗教社会学の新しい読み方-近代西洋のエートスを相対化する三つの文化比較」(橋本努・矢野善郎編『日本マックス・ウェーバー論争-「プロ倫」読解の現在』、2008年8月、ナカニシヤ出版、187-217頁)に発表した。(3)ニーチェの『道徳の系譜について』を読み直し、彼の「ルサンティマン」をめぐる思想の含蓄およびウェーバーによるその受容の仕方について、考察を深めた。(4)トルストイの『戦争と平和』を読み、同書へのウェーバーの言及の意味について考察した。(5)ドストエフスキーの『地下室の手記』を読み、ニーチェの「ルサンティマン」説との関係を考察した。(6)西田幾多郎とウィリアム・ジェイムズとの思想的関係について、従来の「純粋経験」論とは別の視角からアプローチする研究の成果を、「西田幾多郎の『善の研究』とウィリアム・ジェイムズ」にまとめた(現在草稿の状態で、いずれ発表する)。(7)ウェーバーの『古代ユダヤ教』を読み直し、ウェーバーのユダヤ教観・キリスト教観について理解を深めた。ウェーバーが、当時の「宗教史学派」・「文化プロテスタンティズム」と、ユダヤ教蔑視の姿勢を共有していたという上山安敏らの議論を批判的に検討した。(8)ハイデルベルク大学の図書館で図書・学術雑誌を閲覧し、近年のドイツにおけるウェーバー研究の趨勢を調査した。Wolfgang Schluchter教授に面会し、ウェーバー研究に関して意見交換した。(9)ウェーバー宗教社会学に関する研究成果を『ウェーバー宗教論の倫理学的考察』としてまとめた(未来社より出版予定)。
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