「倫理性」概念の分析という基本課題のもとで、本年度は、 (1)(「倫理性」のいわば可能性の条件である)「意志の自由」ということに即して、「自由意志論争」としてそれ自身テーマ的に議論されている問題について、Dennett、Kaneを中心として現代の諸議論をフォローしながら、またカント等の伝統的倫理諸理論や特に量子論等、諸科学理論とも関わらせながら、問題解決に対する私の見解を提示した。その結論は一種の「両立論」である。 (2)近年「道徳心理学」的考察が倫理学の一焦点となってきているが、『倫理学年報』掲載諸論稿へのコメントというかたちで、倫理性の動機の問題について考察した。これは、倫理学史的には、特にHume、Kant、Hare等功利主義理論における各「倫理性」概念の解明を進めたものでもある。また、本申請者の基本課題である倫理性概念の再類型化の作業にも一定の有効な分析視角を与えるものでもある。同時に、いわゆる環境倫理学的考察に対して基礎論的位置を占めるものでもある。
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