本研究課題に関連して、今年度はまず、自然がいかにして市場で流通する商品、あるいは資本として見なされるのかということの理論的背景について研究を行った。経済学における価値の理論は、現在、効用価値説が主流となっており、その最初の提唱者であるカール・メンガーの限界効用説を特に検討した。この限界効用説において、自然の価値は主観に依存するものとなり、また量的に把握されるものとなることが明らかになった。すでに現象学においては、自然の数学化についての批判的な考察が行われているが、自然の資本化は、価値の量化の問題を含んでいるので、選好に関する現象学的分析が必要であることが明らかになった。これらの点をふまえ、日本現象学会第30回研究大会で「自然の資本化-エコフェノメノロジーのための予備的考察」というタイトルで発表を行った。経済に関する現象学的研究は、いまだほとんど手がつけられていない状態であり、新たな問題領域を提示したという意味で、現象学的研究にとって意義があると思われる。また研究成果を積極的に社会に還元することも研究の目的としてあげていたが、これについては、2008年12月12日に愛媛県立宇和島南中等教育学校において「食糧供給と環境問題」というタイトルで高校生を対象にして講演を行った。また2009年2月には、京阪なにわ橋駅のアートスペースB1にて「コーヒーから考える環境問題」というタイトルで一般市民を対象としたセミナーをおこなった。
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