研究目的は、20世紀の思想を、ハイデガー、ウィトゲンシュタイン、アインシュタインを中心にして、形而上学という視点から捉え直すことである。形而上学という視点は、20世紀の思想をギリシア哲学以来の伝統のうちに位置づけることを可能にする。 21年度はアインシュタインが語る形而上学が「自然学を超えて」と「存在論-神学の二重性」という二つの意味において理解できることを示した。アインシュタインは形而上学を「人間精神の自由な創造」のうちに見るが、それは「自然学を超えて」という基本性格に対応し、「自然の先行的な企投」という存在論に属する。さらにアインシュタインにとって物理学は「自然のうちで自己を顕現する理性」を理解することであるが、「理性」とはスピノザの神(神即自然(deus sive natura))である。アインシュタインにとって物理学は二重の意味で、つまり「神が所有するのに最も相応しい学」と「神的なものを対象とする学」という意味で「最も神的な学」、アリストテレスの言う意味での「神学」である。 「物理学は一種の形而上学である」と書いたアインシュタイン、「認識の領域では形而上学的な導きを欠くことはできない」と考えていたシュレディンガー(『わが世界観』)、「初めに対称性ありき」を『ティマイオス』のうちに読み取ったハイゼンベルク(『部分と全体』)を、「物理学と形而上学」という視点から考察した。
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