数年来科研費補助を受けて継続してきた現代フランス哲学の形成に関する研究の成果として、2010年3月に、1932年出版のジャン・ヴァール著『具体的なものへ』を翻訳出版することができた(月曜社)。本書の翻訳出版により、現代フランス哲学の形成過程において、W・ジェイムズ、ホワイトヘッド、G・マルセル等の哲学が大きな役割を果たしたことが、我が国の哲学・思想界にも知られるようになった。この訳書の出版を受けて、2010年12月11日に北海道哲学会・北海道大学哲学会合同シンポジウムにおいて「現代哲学の水脈を求めて-ジャン・ヴァールとその周辺-」が開催され、私を含めた3人の提題者が、ジャン・ヴァールについて発表した【村松正隆(北大)「ジャン・ヴァールの方法-その「相補性」をめぐって-」、山田健二(北見工大)「ジェームズを生み出した渦-ヴァールが論じるジェームズ思想の誕生」、水野浩二(札幌国際大)「<具体的なもの〉と感情」】。その成果は、2011年度北海道哲学会『哲学年報』(58号)に掲載予定になっている。 一方、サルトル倫理学の研究としては、1960年代の遺稿である「命令と価値」を読み解き、論文にまとめ終え、2011年度中に発表の予定である。
|