平成20年度においては、おもに米国およびドイツにおける看護倫理に関する文献資料を収集し、さらに日本医学哲学倫理学会(10月)や日本生命倫理学会(12月)等において他の研究者と看護倫理に関する情報交換を行い、それをふまえた資料の分析を行った。 特にドイツにおける看護倫理や看護師の状況については、主として終末期医療について報告した拙論「ドイツにおける終末期医療の現状」において、研究成果を一部公表することができた。日本にはほとんど伝わってこないドイツにおける看護の状況を知る意味では今回の成果が一つの足がかりとなった。看護倫理に関するドイツの資料は極端に少なく、介護倫理とセットで議論されてしまうことも多いが、そうした中、出版されているわずかな資料についてはそのほとんどを収集することもできた。 なお、看護倫理に関する教育・研究実績が豊富な米国で出版された資料の分析は、21年度への継続課題となった。20年度においては、米国の看護倫理の定番教科書だけでも20冊以上収集することができたので、今後はこれら基礎資料の分析を通じた看護倫理の類型と課題について研究を進める。また、日本ではこれまで議論されることの少なかった精神科看護の倫理に関しても米国の基礎資料を入手することができた。ケアリングとは何かを考察するうえでこれら精神科看護の資料が今後重要な意味を持つと思われる。
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