研究概要 |
研究の全体構想は、古代プラトン主義の哲学文献が、ギリシア語・アラビア語・ラテン語と言語媒体を変え、時代も移り、著者・翻案者の宗教(異教・イスラーム・中世ユダヤ教)も異なるに応じて、いかなる変貌を遂げるかを追跡することにより、ギリシア・イスラーム・ユダヤ縦断の精神史を描くことが最終的な狙いである。 今年度、堀江聡は、主にプロティノス(205-270年)の第50論攷(III,5)「愛について」、第38論攷(VI,7)「いかにしてイデアの多が存立したか、及び善について」、第9論攷(VI,9)「善なるもの、一なるもの」の3論攷の構成、特定関連箇所の分析を行った。原典はOCTを用いるが、フランスのCerfから続々と刊行されつつある注釈書をなるべく多く目を通し消化した。 青柳かおるは、ガザーリー(1111年没)の代表作『宗教諸学の再興』その他のガザーリーの著作を分析し、ガザーリーの性的快楽・合一快楽のアナロギア研究を行った。さらに古典時代のスーフィーのイブン・アラビー(1240年没)、現代の法学者、カラダーウィーの婚姻論(1926年~)などと比較し、古典時代のガザーリーの婚姻論および女性観を、イブン・アラビーを経て、現代のカラダーウィーまでの思想史に位置づけた。 共同でお互いの翻訳、分析を検討し、またそれぞれが研究発表を行い、翻訳および論文を執筆した。
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