本研究は、ヨナス(Hans Jon-as1903-93)の思想的経歴をたどり、そのグノーシス研究、第二次世界大戦後の生命の哲学、地球規模での生態系破壊に対処する倫理である責任原理、晩年のアウシュヴィッツ以後の神概念の探究の少なくとも四期に分節されるその展開の統合的な理解を目的とする。すなわち、(1)四期にわたる思想の展開の統合的な理解の提示、(2)各期それぞれのいっそう深い解釈の提示が本研究の目標である。最終年度にあたる2011年度には、聖書研究およびグノーシス研究の段階に焦点をしぼった論文の作成をめざして、とくにヨナスが、パウロの『ローマ人への手紙』についてのアウグスティヌスの解釈と対決しながら自由の問題を論じた最初の著作Augustin und das Paulnische Problemの読解を進めた。しかし、2011年度を最終年度とする本研究の内容をいっそう展開するしかたで再構築するために、2010年秋に「ハンス・ヨナスの哲学の統合的かつ重層的な理解の構築」と題して、2011年度を含めて4年間にわたる基盤研究(C)を申請し、2011年度4月末に採択された。したがって、本研究費による研究の遂行は、実質、2011年4月の一ヶ月弱のあいだにかぎられており、その期間に限定すると公表できた研究成果はないが、以後引き続き、新たな題目のもとで研究を進展させている。
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