研究概要 |
本年度はまずVDIの企画による全5巻の『技術-社会-自然Technik-Gesellshaft-Natur』(1999-2003)の第5巻である『技術者の倫理的責任Ethische Ingenieurverantwortung』を研究協力者と分担して翻訳しその内容を詳細に検討した。特に,2001年に作成された「技術者倫理の根本原理Ethische Grundsatzedes Ingenieurberufs」について詳細に理解するとともに,その作成に携わった委員会のメンバー,特に哲学者たちがどのような考えを持っていたのかを考察した。この考察の成果は「ドイツにおける技術倫理とVDI(2)-『VDIの哲学者たち』と『技術者倫理の根本原理』-」と題した論文で発表した。そこでは,技術者に固有の責任としての「戦略的責任」,様々な価値の対立の中で考えられなければならない「予防的道徳」といった概念が特徴的であることを示唆するとともに,VDIのような機関の責任や技術者に対する支援も重要なものとして述べられていることを明らかにした。 一方,『技術,技術者と社会Technik, Ingenieure und Gesellshaft』(1981)を参考にしつつ,そこで挙げられている参考資料を調べるため,国立国会図書館を訪問した。本館には新聞VDI-Nachrichten,関西館には雑誌VDI-Zeitschriftがあり,そこで閲覧するとともに,必要な資料をコピーしたが,それぞれの資料は膨大なものであり,限られた時間で全てに目を通すことはできなかった。しかし,本研究にとって非常に参考になる資料がたくさん見つけることができたこともあり,こうした調査は今後も継続し,それと並行して得られた情報をもとにまとめた内容を論文などで発表していく予定である。
|