本年度は、次の研究を行った。 (1) 初期江南仏教を代表する支謙の訳経として、『仏説阿弥陀経三耶三仏薩楼仏壇過度人道経』(いわゆる『大阿弥陀経』)を丁寧に読み解き、霊宝経との比較研究を行った。 (2) 康僧会訳『六度集経』について、2年前から、中国仏教思想・中国仏教美術史・インド仏教学・日本説話学の専門家たちからなる研究会を組織し、毎月1回集まって、合同の読書会を開き、日本語訳を作成している。今年度は、巻4を完成した。『六度集経』は、仏陀の本生譚を集めた訳経として重要なものであるが、難解な箇所も多い。この研究会では、諸専門分野からの発言を交えた学際的な討議の場として、着実な成果を挙げている。 (3) 平成20年10月に北京の中国人民大学で開催された第3回中日仏学会議に出席し、「元始天尊をめぐる仏道論争」と題する研究発表を中国語で行い、討論を行った。道教と仏教の関係をめぐる発表であり、本研究とも関係が深い。
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