本年度は次の研究を行った。 1.長江下流域から出土した神亭壺(魂瓶)についての近年の研究成果を確認するために研究論文等の資料収集を行った。 2.平成21年10月に北京大学教授李淞氏による講演会を名古屋大学文学部で開催し、漢代三段式神獣鏡についての新たな知見を得た。この講演記録は『名古屋大学中国哲学論集』第十号(平成22年5月刊行)に掲載。 3.前年度に引き続き、康僧会訳『六度集経』の読書会を毎月1回行った。この読書会は中国哲学・中国仏教思想・インド仏教学・東アジア仏教美術史・日本説話文学などの専門家で構成されており、毎回、各分野からの貴重な意見が出されている。本年度は巻五をほぼ読み終え、日本語訳を作成した。 4.平成21年11月に岩波書店より『老子 <道>への回帰』を刊行した。これは「書物誕生 あたらしい古典入門」というシリーズの一冊であり、一般読者にもわかりやすく書いたものであるが、この中に「老子と仏教」「老子と道教」の章を設け、中国伝来初期の仏教の特徴について説明した。文中に『六度集経』のことも取り上げ、中国固有の思想と仏教思想との融合について考察した。
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