本研究(単独研究)は、儒教・仏教・道教の経典ならびに葬送儀礼文書と出土資料(墓域から出土する文字資料)を文献学的に考察することを通じて、死霊観という今に続く宗教的心性の形成過程を探りつつ、それが墓葬制の変化にどのような影響を与えているのかを比較宗教史的に明らかにしようとするものである。これによって現代社会において墓のありようを考えるための歴史的事例を準備したいと考えている。 本年度は、道教経典『洞淵神呪経』巻九「逐鬼品」について敦煙写本の翻刻を行ない、これを道蔵本と比較することによって校訂本文を作成し、さらにこれにもとづいた現代語訳を試みた。東洋大学東洋学研究所が所蔵するマイクロフィルム等をもとに翻刻した写本は以下のとおりである。 [1]パリ国立図書館所蔵敦煙写本ペリオ2473番[2]同ペリオ2749番 [3]同ペリオ2793番[4]同ペリオ3309番 [5]大英図書館所蔵敦煙写本スタイン3705番 以上の作業を踏まえ、言語および思想の各レベルにおいて異同を検討し、六朝道教における死霊観の変遷をたどるための文献的基礎の構築をめざした。
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