研究課題/領域番号 |
20520040
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
青木 隆 日本大学, 文理学部, 准教授 (20349947)
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研究分担者 |
黒岩 高 武蔵大学, 人文学部, 准教授 (60409365)
仁子 寿晴 人間文化研究機構, 京都大学イスラーム地域研究センター, 研究員 (10376519)
佐藤 実 関西大学, 文化交渉学教育研究拠点, 研究員 (70447671)
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キーワード | 中国哲学 / 宗教学 / 自然学 / スーフィズム / 朱子学 |
研究概要 |
初年度となる本年度は、延べ18回にわたる会読・検討会を行い、劉智『天方性理』巻3の後半部の第6章から第12章までの本文の現代日本語訳の検討と、語釈・章ごとの内容理解について参加者の専門的見地から徹底的に討議を行った。 ミクロコスモスの創造がテーマである巻3の役割は、世界の根源たる「真宰」とミクロコスモスたる「我」との合一がどうして可能なのか、その根拠をミクロコスモスの自然学に託して闡明することにある。巻3後半部分は、誕生以後の人間の生長が霊的生長として語られ、ついには「真宰」出現の瞬間の「真宰」に等しい「継性」が顕現するところまで到達する。しかし、継性はこのときはじめて出現するのではない。母親の胎内で胎児の身体が完成すると、人間本性(霊活)が身体に出現する。このとき継性は霊活の一つとして出現しているのだが、まだ顕現していない(第6章)。この継性がミクロコスモスの完成にともなって顕現するとき、継性の本体がそのまま「我」の本体となるのだが、そのとき、「我」はすべての個物の始源であり、同時に帰着でもある「真宰」の出現の瞬間と等しくなる(第12章)。もちろん、すべての人間が継性に到達できるわけではない。こうして巻3は、継性に到達し神と合一できる「人極」(完全人間)を取り扱う巻四のために、その前提となるミクロコスモスの自然学を詳述するのである。 真宰はこの世の創造のすべてを主宰しているのだが、真宰出現の瞬間にまで真宰が到達すると、もはや真宰は創造を主宰できなくなる。そこはおそらく真宰の支配すら超越した形而上学的領域であって、そのとき真宰は「自由」となると劉智は語る(第12章)。神との合一を目指す「帰真」に「自由」が結びつけられている点は、中国イスラム思想における「自由」を理解するうえで非常に興味深い。
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