研究課題/領域番号 |
20520040
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
仁子 寿晴 京都大学, 大学院・アジア・アフリカ地域研究研究科, 特任准教授 (10376519)
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研究分担者 |
黒岩 高 武蔵大学, 人文学部, 准教授 (60409365)
佐藤 実 大妻女子大学, 比較文化学部, 助教 (70447671)
青木 隆 日本大学, 文理学部, 准教授 (20349947)
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キーワード | 回儒 / 自然学 / 医学史 / 霊魂論 / 朱子学 / イスラーム神秘主義 |
研究概要 |
明末清初期は漢文で自らの思想を紡ぎだす時代だという点からみて中国イスラームにとり特別な意味を.持つ。そうした思想を体現した回儒文献のなかで特に異彩を放つのが当研究の採りあげる『天方性理』である。この書には当時、中国に流入しつつあったイエズス会士の自然学を参照した形跡があり、科学史的文脈を踏まえずしてその思想を掴めないところにその特異性がある。すなわち、『天方性理』は13世紀のスーフィー、イブン・アラビー(d.1240)に連なる神秘思想を宋学/朱子学の語彙で表現したと言われることが多いが、そうした紋切り型の説明では決して語れない側面を持つのである。本研究では、以上の問題意識にもとづき、特に、『天方性理』巻三に見える人体に関する自然学的思考、巻五に見える神秘主義(マクロコスモスとミクロコスモスの同時把握)がどのように連関するのかを追及しつつ、『天方性理』のもつ特異性に迫り、そこで得られた理解をもとに訳注・解説を作成することを目的としている。 当該年度2011年度は『天方性理』巻三の前半(「身」を主題とする自然学)および後半(「性」を主題とする自然学)を巻一(マクロコスモスの生成を主題とする)、巻五と対照させつつ再検討した。巻三の重大なソースとしてイブン・アラビーより若干後の時代のアズィーズ・ナサフィー(d.after 1280)によるペルシア語文献Maqsad-e Aqsaが既に知られるが、それ以外に〓玉函(Terrentius,d.1630)『人身説概』、支儒略(Aleni,d.1649)『性学粗述』などのイエズス会士自然学文献(『性学粗述』の一部に霊魂論が含まれる)をも参考にしていることが判明し、これらの著作と綿密に照合を行った結果、ナサフィー(つまり、イスラーム世界の自然学)ともイエズス会士の自然学とも異なる身体/霊魂観をマクロコスモスとマクロコスモスの照合関係のうちに劉智が創出したことが見出された。この構造をもとにした劉智におけるマクロコスモスと世界認識の分析は、本研究課題により発行された雑誌『中国伊斯蘭思想研究』所収「訳注天方性理巻三その一」で詳細に解説した。
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