本研究は、明治前期に日中両国間を往来した人々が交わした筆談の資料や、旅行記などの基本史料を系統的に調査のうえ整理、分析を行ない、この時期の両国の人間同士の交流の実態や、日中間における文化往来の史実を考察するものである。本年度は日本国内と中国の北京・上海を中心として調査を行い、文献資料の面も現地調査の面も大きな収穫があった。また、筆談資料と日本人の中国旅行記の収集と整理を行い、その時代背景と関係人物の研究を行ってきた。新資料の発現と考訂を通して、新たな史実を浮き彫りすることができ、その一部は学会で発表し、また、研究成果として「新出の楊守敬宛の羅振玉の書翰について」(『書論』掲載予定)、「十九世紀七、八十年代における中国書画家の日本遊歴」(『中国社会と文化』掲載予定)などの論文をまとめた。
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