インド論理学派(ニヤーヤ)の学体系をまとめた現存最古の綱要書『ニヤーヤ・カリカー』(NK)の世界最初の批判校訂テキストを作成し、かつ著者ジャヤンタの主著『ニヤーヤ・マンジャリー』(NM)との比較検討を行ないつつ翻訳・解説を施して、ジャヤンタが描出するニヤーヤ哲学の概観を提示することが本研究の作業目的である。その目的遂行のために本年度は、稀少なシャーラダ文字NK写本撮影と情報収集・意見交換等を目的としたインド出張(デリー、ウッジャイン)を行い、またNK校訂テキスト作成・翻訳作業の継続のため、研究補助作業への謝金を支出した。また研究成果の一部を二つの国際学会で口頭発表(英語)した。一つはバルセロナで開催された国際インド哲学会議World view and theory in Indian philosophy(2009.4.27-30)において、ジャヤンタのインド論理学史展開の位置づけとNKの著者問題解決に重要な手掛かりを得ることになった「定説」概念の分析結果を発表した(海外出張)。もう一つは京都大学で開催された国際サンスクリット学会(2009.9.1-5)において、prAmANyaという概念をめぐる議論は単なる認識論あるいは真理論では収まりきらない宗教的な問題意識が基礎にあることをクマーリラやジャヤンタのテキストにもとづいて明らかにする発表を行った(国内出張)。そのほか、インドの研究者の講演の開催(講演謝金)や、日本インド学仏教学界第60回学術大会の参加(京都出張)を通じて、国内外のインド哲学研究者と意見交換を行うなどした。またジャヤンタ研究の一環としてNM中の「六タルカ」概念をめぐる考察をまとめ、論文発表も行った(印刷中)。
|