本研究はインド、マハーラーシュトラ州におけるシヴァ神およびガネーシャ神寺院に関して、現代ヒンドゥイズムの巡礼地の実態と機能を明らかにすることを目的とする。平成20年度は、(1)文献研究および(2)現地調査を行った。(1)に関しては、『シヴァ・プラーナ』『リンガ・プラーナ』等サンスクリット文献に現れるシヴァ・リンガの崇拝形態および12ジョーティル・リンガ寺院の縁起について記述された内容を分析し、シヴァ・リンガ崇拝のシンボリズムに関する考察を行った。以上の文献研究の成果として「南アジアの寺院縁起-ヒンドゥー教シヴァ・リンガ崇拝の神話と巡礼」を発表した。そこにおいてはリンガ崇拝が水とかかわりのあること、リンガは火の象徴であり、水をかけて崇拝することは宇宙創造のシンボリズムを示していることを指摘した。また(2)現地調査に関しては、平成20年8月および12月にインドに出張し、マハーラーシュトラ州の5つのジョーティル・リンガ寺院および2つのガネーシャ寺院を調査し、寺院に関する文献資料の収集、儀礼の映像資料収集等を行った。特にエローラ地区にあるグリシュネーシュヴァル寺院においては詳細な儀礼の写真撮影、聞き取り調査を行い、その成果として平成20年9月日本印度学仏教学会で研究発表を行い、同学会誌に論文を発表した。そこにおいてグリシュネーシュヴァル寺院のリンガはエローラ最大のシヴァ寺院カイラーサナータおよびイェーラ川と関連し、これら三者はプラーナ文献等に現れる神話的世界観を表していることを指摘した。
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