本研究は、インド、マハーラーシュトラ州におけるシヴァ・リンガ崇拝およびガネーシャ神の崇拝に関し、それらの神々を本尊とする寺院の構造、儀礼、神話の分析等から現代ヒンドゥイズムの巡礼地の実態と機能を明らかにすることを目的とする。平成21年度は、(1)文献研究および(2)現地調査を行った。(1)に関しては、平成20年度に引き続き、『シヴァ・プラーナ』『リンガ・プラーナ』等サンスクリット文献に現れるシヴァ・リンガの崇拝形態および12ジョーティル・リンガ寺院の縁起について記述された内容を分析し、シヴァ・リンガ崇拝のシンボリズムに関する考察を行った。その成果として現在『シヴァ・プラーナ』中の『コーティ・ルドラ・サンヒター』第14章から第33章に述べられる12ジョーティル・リンガ寺院の由来譚の和訳を行っており、平成22年度中に完成予定である。(2)に関しては、平成21年8月7日より22日までネパール、カトマンドゥ盆地にて調査を行った。今回の出張は、カトマンドゥ盆地に存在するシヴァ神寺院におけるシヴァ信仰の実態を把握するとともに、タントリックな要素を含むカトマンドゥ盆地のシヴァ信仰と、タントリックな要素を含まないマハーラーシュトラ州のシヴァ信仰との比較を行うことが目的であった。調査対象は、パタン市のクンベーシュヴァル寺院であり、同寺院の施設、儀礼、図像等について映像資料収集を行い、またシヴァ信仰、リンガ等に関する文献資料の収集を行った。これらの資料は現在まだ整理中であり、分析およびマハーラーシュトラ州でのシヴァ信仰との比較・検討までには至っていないため、平成22年度も継続的にカトマンドゥ盆地において、インフォーマントからの情報収集や他寺院の映像資料収集、また文献資料収集などを行う予定である。以上
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