本研究はインド、マハーラーシュトラ州におけるシヴァ・リンガ崇拝およびガネーシャ神の崇拝に関し、それらの神々を本尊とする寺院の構造、儀礼、神話の分析等から現代ヒンドゥイズムの巡礼地の実態と機能を明らかにすることを目的とする。平成23年度は昨年度に引き続き(1)文献研究および(2)現地調査を行った。 (1)においては『シヴァ・プラーナ』『リンガ・プラーナ』をはじめとした諸プラーナ文献にあらわれるシヴァ・リンガを本尊とする12のジョーティル・リンガ寺院について、寺院縁起の記述と文献に述べられるリンガに対する礼拝儀礼の構造について分析を進めた。プラーナ文献におけるリンガの礼拝儀礼は多くの場合オーソドックスな供養(プージャー)の形式をとっているが、その中で共通する特色は水を多用することであり、リンガ・プージャーにおいては水が重要な機能を果たすことが明らかになった。 (2)現地調査については平成23年8月1日から18日まで、インド、マハーラーシュトラ州プネー市およびネパール、カトマンドゥ盆地に出張した。プネー市ではバンダルカル東洋学研究所図書館において『シヴァ・プラーナ』のサンスクリット、ヒンディー語、マラーティー語のテキストおよびシヴァ・リンガ関連の二次文献資料のコピーを入手した。またプラーナ文献の関連箇所についての疑問点および、マハーラーシュトラ州エローラ地区にあるジョーティル・リンガ寺院グリシュネーシュヴァル寺院で撮影したリンガ供養とその際使用されたサンスクリットテキストを参照しながら氏に疑問点の質問を行った。その他オーンカレーシュヴァル寺院などプネー市内のシヴァ神を本尊とする寺院に赴き映像資料収集を行った。またカトマンドゥ盆地においてはクンベーシュヴァル寺院等の写真撮影を行った。以上の結果を踏まえ、『シヴァ・プラーナ』中のジョーティル・リンガに関する箇所の翻訳作業を行い、成果の一部について紀要等に発表する予定である。
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