本研究の目的は、主に『ダーカールナヴァタントラ』およびその周辺の文献を調査することにより、インド仏教(密教)の最後の姿の一端を明らかにすることである。インド仏教の最後期の姿がどのようなものであったかは、まだ十分解明されているとは言いがたい。上記仏教伝統はインド仏教最後期に登場し、壮大な体系を有するものである。同伝統の研究は戦前からしばしば着手されていたものの、いまだ十分になされているとは言いがたい。研究代表者は、同伝統を解明することにより、インド仏教(密教)の最後期を理解するための新たな視 野を切り開くことを目指している。 そのため、本研究の初年度となる平成20年度は、資料収集による研究環境の充実と、資料解読を可能な限り進めることを目標とした。2度に渡るインド・ネパール(デリー、マトゥラー、グワーハーティ、バトナー、ナーランダー、サーンチー、カトマンドゥ)出張により、本研究遂行に有益な資料を多く入手することができた。具体的には、主要資料となる数々の写本資料(コピーにより取得)、補助資料となる数々の考古学的資料(カメラ撮影により取得)を充実することができた。また、これら新資料も含めた資料を読み進め、その成果の一端を、学術雑誌への論文投稿の中に取り入れることもできた。「研究実行計画」に記した、平成20年度の目標を達成したとの自負を得ている。これにより、収集資料の精緻な解読を進めるという平成21年度の研究計画につなげることができると確信している。
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