本研究は、インド仏教(密教)最後期経典の1つである『ダーカールナヴァ・タントラ』(Dakarnavatantra)の第15章(ヘールカ曼茶羅の章)の梵語校訂テキストと英語訳注を作成することを主目的とする。この文献学的基礎研究を通して、未解明の部分の多いインド仏教の最後期の姿の一面を、インド密教という側面から明らかにする一助とする。本最終年度(平成22年度)、平時は国内において、昨年度までにネパール等から収取した資料群を用いて上記校訂テキスト等の完成のための作業を進めた。平成22年10月3日に、本成果の一部を含めた口頭発表(招待発表)を、Harvard大学にて開催された国際会議Variations of Homa:From Vedic to Hindu and Buddhist(10月1日~3日)にて行った(航空会社のフライトスケジュールの都合上、1日分の旅費を使用)。さらに、12月12日から18日にネパール古文書館を短期で訪問し、関連写本の細部を、写本原本を用いて再確認した(旅費使用)。こうして、上記の校訂テキスト等を完成させるに至った。英語論文での成果発表を計画しているため、ネイティヴによる英文チェックを行って頂いた(謝金使用)。研究成果を国際的な場に提供することも本研究の目的であるので、上記最終成果を、本分野の代表的国際誌であるTantric Studies(University of Hamburg)へ2011年度に投稿する。刊行時期自体については、同ジャーナルの編集刊行手続きに依存するため、現段階では正確な時期を公言することはできないが、投稿自体を完了させる準備を整えることはできた。
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