研究概要 |
本研究は、愛媛県宇和島市津島町に残るオリヤー語版『マハーバーラタ』の貝葉写本「津島貝葉」に対するものである。『マハーバーラタ』研究、とりわけその受容史の解明に有益である当該写本のローマ字転写および校訂テキストの作成を中心とし、同時に、同系統貝葉写本の有無や当該写本の日本伝来の経緯についても明らかにすることを目的としている。これらの目的を達成するために研究をすすめ、2008年度は、以下のような成果を得た。 (1)写本の読解作業の効率化を図るため、1a〜50b(両面記載で100ページ)までを画像デジタル化した。 (2)解読困難なコロニー(karani)書体で刻まれた当該写本の内容を利用しやすい形にし、広く研究者に利用してもらうため、画像デジタル化した部分について、そのローマ字転写テキスト(diplomatic edition)を作成した。 (3)ローマ字転写テキストを、既に活字出版されている2冊のオリヤー語版『マハーバーラタ』〔オリッサ文化庁<Department of Culture, Government of Orissa>(1966年)及びDharmagrantha Store (1900〜2000)〕と比較・検討し、校訂テキストを作成した。 (4)該当写本の作成地であるインド東部・オリッサ州にて調査を行ない、当該写本と同じ表題を有する3点の写本を発見し、写真撮影を行なった。今後の校訂テキスト作成作業において大変有益であるこれらの写本に対する検討は、今後の課題である。 (5)オリッサがアショーカ王の時代から、東南アジアと海路を通じての交流があり、宗教的、文化的な影響を与えていたことは、周知の通りである。当該写本は東南アジア経由で日本に伝来したと思われる。そこで、タイとカンボジアで調査を実施し、オリッサから伝来した貝葉写本が存在するとの情報を得た。
|