研究概要 |
本研究は、愛媛県宇和島市津島町に残るオリヤー語版『マハーバーラタ』の貝葉写本「津島貝葉」に関するものである。『マハーバーラタ』研究、とりわけその受容史の解明に有益である当該写本のローマ字転写および校訂テキストの作成を中心とし、同時に、同系統貝葉写本の有無や当該写本の日本伝来の経緯についても明らかにすることを目的としている。これらの目的を達成するために研究を進め、2010年度は、以下のような成果を得た。 (1) 写本の読解作業の効率化を図るため、151a~221b(両面記載で142葉)までをデジタル画像化した。 (2) 解読困難なカラニー(kara□□)書体で刻まれた当該写本の内容を利用しやすい形にし、広く研究者に利用してもらうため、デジタル画像化した部分について、そのローマ字転写テキスト(diplomatic edition)を作成した。 (3) ローマ字転写テキストを、既に活字出版されている2冊のオリヤー語版『マハーバーラタ』〔オリッサ文化庁<Department of Culture, Government of Orissa>(1966年)及びDharmagrantha Store (1900~2000)〕と比較・検討し、校訂ノートを作成した。 (4) 2011年2月12日~2011年3月25日まで該当写本の作成地であるインド東部・オリッサ州へ行き、研究調査を行った。その成果としてオリッサ州立博物館、国立資料館東支所および個人蔵などに「津島貝葉」と同系統(つまり年代が同じで、同一の著者であり、同一部分で言語と書体が同じ)の4本貝葉写本の存在を確認できた。これらの異本を用い、今後「津島貝葉」の校訂テキストの作成に専念する予定である。
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