ジャイナ教の二大分派である白衣派・空衣派から権威が認められている『諦義経』での宇宙論を研究し、両派の宇宙論の相違点と類似点を明らかにした。すなわち下界の描写においては両派に相違は殆ど見られないが、上界の構造については大きな相違があり、名称等も異なっている。また、『諦義経』以前の文献として白衣派の聖典であるSthangasutraを研究し、これまで記載の報告がなかったlokanadiの記述があることを発見した。一方、空衣派の文献ではTrilokaprajnaptiの研究に着手し、やはりlokanadiの記述があることを見いだした。 図像分析に関しては、既に入手しているカタログから、宇宙論に関する挿絵を有する写本の選定を行い、所在地を確定することが出来た。また、いわゆる人間型宇宙図(lokapurusa)の起原に関しては、様々な研究者と意見を交わす中で、中世以降であろうとの見解を持つに至った。
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