自然的宗教史から見たドイツ観念論思想における悪論とその救いの構造について解明するために、今まで研究してきたシェリングの悪論を踏まえた上で、神と救いとの関係を明らかにしようと考え、「後期シェリング哲学における神」と題して日本シェリング協会学術大会で研究発表を行った。 従来フィヒテにおいて悪は善をなすための障害というくらいにしか考えられていなかったが、もっと重要な意義があると考え、『浄福なる生への導き』で展開されている生の五段階について検討し直し、最初の二段階は人間の悪しき存在様態を示しているものであるということを、日本宗教学会で「フィヒテ宗教論再考」と題して研究発表した。この発表をしたことによって、フィヒテは浄福をこの世において獲得しうると考えていたのではないか、という思いを強くするようになり、この点の解明を次年度において続けることにしようと思っている。 ヘーゲルに関しては『精神の現象学』ならびに『宗教哲学講義』の原典研究を続けている。 シェリング哲学総決算の書である『啓示の哲学』の全訳を弘前大学人文学部紀要において順次公表を続けてきたがが、本年度ついに『啓示の哲学』本文ならびに附論「積極的哲学の諸原理の別の演繹」、「ベルリンでの第一講」を含め完成を見た。当初の計画では燈影社から刊行できる予定であったがが、シェリング著作集の刊行予定がまったく進んでおらず、刊行後本書を出版するはずの約束が反故になり、新しい出版社を捜さねばならないこととなった。
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