研究課題
共同作業に基づく社会学年報学派の宗教研究の全体像を明らかにし、その宗教学史的意義の再検討を目的とする本研究において、本年度は昨年度に引き続き、ユベール・モース「供犠の本質と機能に関する試論」(以下、「供犠論」と略記する)の生成過程を考察すると共に、イギリス社会人類学との交流を検討した。その作業の一貫として、8月下旬の1週間、IMEC所蔵のFonds Maussの調査に赴き、「供犠論」の草稿、膨大なモース宛の書簡の目録、フレーザーからモースに宛てられた20通の書簡、さらにはIMEC所蔵のFonds Halbwachsの目録を、それぞれ精査した。とりわけフレーザーの書簡の文面からは、モースとの真情あふれる交流が窺われ、従来、どちらかといえば、宗教研究の基本的な視角をめぐって対立関係にあったとみなされてきた、社会学年報学派とイギリス社会人類学派との問の意外な親近性が新たに浮かび上がってきた。この調査結果もふまえ、ユベール、モース、デュルケーム三者の共同作業に基づく「供犠論」の生成過程に関して、前年度の検討結果をさらに展開させて、その一端を「デュルケームとモースの「隠された共同作業」-「供犠論」の生成」と題して日本宗教学会第65回学術大会にて発表した。さらに、当時のトーテミズムをめぐる状況に関しても、予備的作業としてデュルケームからレヴィ・ストロースに至る研究動向の変遷の概要を検討した。その成果の一端は、『宗教学事典』(丸善、印刷中)の「トーテミズム」「原始心性」の項目において、発表する予定である。
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http://sir.lib.shimane-u.ac.jp/meta-bin/mt-pmtlist.cgi