研究課題/領域番号 |
20520057
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
山崎 亮 島根大学, 法文学部, 教授 (40191275)
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キーワード | 宗教学 / 社会学年報学派 / デュルケーム / モース / ユベール / トーテミスム / 供犠 / 『宗教生活の基本形態』 |
研究概要 |
共同作業に基づく社会学年報学派の宗教研究の全体像を明らかにし、その宗教学史的意義の再検討を目的とする本研究において、本年度は、これまでの研究成果をふまえ、ユベール・モース「供犠の本質と機能に関する試論」の生成過程の解明に努めた。その作業の一環として、10月初旬の4日間、IMEC所蔵のFonds Maussの調査に赴き、この論文をめぐるユベールとモースのやり取りに関して、膨大な量にのぼる両者間の書簡の一部を再び精査した。併せて姉崎正治、松本信廣や東洋文庫等からのモース宛書簡を精査し、これをふまえて社会学年報学派による宗教研究が日本の宗教学に与えた影響関係を考察した。その成果の一端はJapan's reception of Les forms elementaires de la vie religiouseとして発表した。本論文は、国際的に権威ある宗教学の専門誌Religion42-1の『宗教生活の基本形態』出版100周年特集号に、乞われて寄稿したものであり、社会学年報学派による宗教研究の集大成たる『宗教生活の基本形態』が日本に受容される過程を、赤松智城や古野清人らによる同書の紹介・解釈を中心に辿ったオリジナリティの高い論考である。これは、社会学年報学派による宗教研究の宗教学史的意義の再検討の一環をなしている。 他方、当時の社会的・思想的コンテクストを明らかにする作業も継続しており、本年度は、その成果の一端として伊達聖伸著『ライシテ、道徳、宗教学-もうひとつの19世紀フランス宗教史』の書評を発表した。本書は19世紀のフランスにおける宗教学の生成を、ライシテの道徳との動態的な関係性のなかで圧倒的なスケールで描き出した力作であり、その骨格と問題点とを宗教学の視点から批評した。 ここまでの研究によって蓄積された成果をもとに、デュルケームの『宗教生活の基本形態(Les forms elementaires de la vie religiouse)』(1912)そのものの精査にも着手した。社会学年報学派による宗教研究に共通する枠組み、ならびにその共時的・動態的な視点が、本書のなかでどのように定式されたかの検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フランスでの文献調査に一定の成果を上げ、社会学年報学派の宗教研究に関わる共同作業の内実を検討するとともに、当時のフランスにおける宗教学の動向や社会学年報学派による宗教研究の日本への受容の問題-昨年度からの新たな研究展開-の検討にも積極的に取り組むことができ、その成果の一端を論文と書評として公表することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は研究の最終年度にあたり、これまでに蓄積された調査結果、ならびに検討の成果を総括する。社会学年報学派による宗教研究に共通する枠組みと共時的かつ動態的な視点を前提に、その集大成たるデュルケームの『宗教生活の基本形態』(1912)を継続して精査する。併せて、古野清人による本書の翻訳作業の問題点を総括することも含めて、社会学年報学派による宗教研究の、宗教学史的意義を検討する。
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