本研究は、「道の宗教性」を「道の儀礼」の実践という事例を主体に調査し、「文化的景観」の生成過程を「巡礼」「祝祭」「交換」「記憶」「芸能」を重点テーマとして、民俗宗教の観点から明らかにするものである。本年度は最終年度にあたるため、研究代表者・研究協力者は調査の一層の深化に努めるとともに、全体会議と研究成果報告書の作成をとおし研究全体の総括を行った。 研究代表者・鈴木正崇は、「巡礼」に関して研究協力者・中山和久と協力して篠栗町で調査を行い、「祝祭」に関しては同様に谷部真吾と協力して静岡県磐田市の調査を行い、現代の変容を探った。これに加えて、研究協力者・浅川泰宏は徳島県の遍路道再生運動に関して、織田竜也は長崎半島などにおける歴史遺産資源の現代的な交換に関して、宮坂清は南伊豆における農地景観の観光資源化に関して、市田雅崇は道の宗教性と地域社会の歴史性の相互連関に関して、宮下克也は沖縄における首里巡拝の現代的意味に関して、夏期を中心にそれぞれ1週間程度の現地調査を1回程度遂行した。 研究者間の調査データ共有および研究全体の総括のため、年間2回、全体会議を開催した。最後にまとめとして、全体会議における議論を踏まえて、研究成果として報告書『道の宗教性と文化的景観』を作成した。 今回の調査・研究を通じて、「道の宗教性」がもつ創造性や、「文化的景観」をめぐる新たな民俗の生成や遺産化をめぐる諸問題が浮き彫りにされ、動態的な宗教民俗学の構築へと展開することが可能になった。今後さらに研究成果を公刊していく予定である。
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