・ 関東系親鸞伝説を内容とする親鸞絵伝の当該地域以外への広がりについての調査を行い、以前に明らかになった北陸地域以外に九州および北海道への伝播を確認した。今後は、さらに同様の事例を探索するとともに、それぞれについて伝播の具体相やその背景、および地域での宗教的機能について明らかにしていく。 関東系親鸞伝説は、本山の主唱する親鸞伝とはことなり、在地伝承をとりいれるのが普通であり、それは関東の門徒において意味を持つものであった。しかし、例えば長崎の寺院に伝わった例では地域性に染まらずに使用されている点で興味深い事例である。なぜ関東系親鸞伝説は、地方へ移植されるのか。今後問うてみなければならない問題である。 ・ 「二十四輩巡拝帳」の分析をすすめ、旅程などが徐々に明らかになってきた。また新たな巡拝帳の存在を確認した。これは現在比較検討中である。 ・ 「四国地方の二十四輩ミニ巡礼霊場についての調査を続行し、現在までに19ヶ所を確認した。さらに10ヶ所の存在が浮かび上がってきており、それぞれについて実地に確認しまた聞き取り調査などを行って、それぞれの歴史的過程を明らかにしつつある。 二十四輩石仏は、現在では寺院境内に一括でおかれている場合もおおいが、そのほとんどはここ20年ほどの間に集められたものであって、以前は広狭の程度の差こそあれ、何らかのかたちで巡拝が可能なようにおかれていた。 石仏には、一体ごとに施主の名が刻まれているのが普通で、たとえば香川県宇多津の茶臼山におかれている事例では、施主の子孫が管理していることが確認できた。ここの場合は、ゆるい血縁によるようである。ほかに管理者としては、愛媛県宇和島九島のように地縁による場合がある。
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