第二年度は、ガンディーのアンベードカルの不可触民制度およびカースト制度に関する見解の相違を整理するとともに、さらにガンディーとサナタニストとの論争を分析することによって、「伝統と近代の狭間で」形成されるガンディーの考え方の特徴を理解することに努めた。とりわけ後者の点については、スタンフォード大学にてナトラーム・ゴードセーの法廷証言を入手することができ、鋭意分析中である。しかしながら、問題は、ゴードセーの見解が、ヒンドゥーの伝統主義者の見解を代表していると考えていた研究代表者の当初の想定に反して、たとえば、アシス・ナンディーなどは、ゴードセーが、近代のとりわけ中産階級のメンタリティーを代表して、ガンディーの暗殺にいたったとの見解を示している。この点は、ガンディーのカースト観を理解するうえで、重要な論点となりうるものであり、今後さらに慎重な吟味が必要である。 さらに、ガンディーの同時代より今日まで、おびただしい数の論者が、彼の「近代」理解をめぐって論評してきており、これを吟味する作業を行った。この点については、今年度の研究成果として、『香川法学』第29巻第3・4号に掲載されている。さらに、論文"Gandhism in the Age of Globalization : Beyond Amartya K. Sen's Criticism"をガンディー研究に関する学術誌であるGandhi Margに投稿したところ採択され、2010年4-6月号に掲載されることが決定した。
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