本研究は、近年の米国及び東アジア地域での戦争の記憶に関わる文化理論研究の動向をふまえ、占領期を結節点としての「戦争後」日本を問題にする。特に、近年公開が進む占領期及び戦後の一次史料を読み解くことで、新たな「事実」や言説を見いだし、思想史文化論の資料として検討した。今年は空襲死者についての記録状況の検討をさらに進めるため、空襲研究側の公刊物のリスト化及び研究状況についての調査を進めるとともに、ミクロなレベルでは、神戸市兵庫図書館に寄託中の神戸空襲を記録する会収集資料の整理を進め、都市の戦後復興との関係を検討した。ほか、新たに米国戦略爆撃団のマイクロフィルムを検討し、何が調査され、何が調査されなかったのか、検討した。また戦後の遺骨収集と国立墓地構想についても環境象所蔵史料を蒐集し、空襲死者との関係も検討した。沖縄地域については、1950年代での遺骨収集運動及び1970年代での非文献資料であるモニュメントについての文献一次史料翻訳・整理に加え、1970年代後半に至る本土府県側の対応について、補調査を行った。その成果として現在、単著を準備中であり、戦時下の遺骨と戦跡関係に言及した部分を韓国の全北大学、全北史学会機関誌に掲載した。ほか、東京空襲戦災資料センターでの例会報告、『神戸空襲だより』(2010.3)への「第三十九回八王子・多摩空襲戦災を記録する会全国連絡会議」大会参加記の寄稿をおこなうほか、空襲・空爆研究の現在について寄稿した(『日本思想史学会会報』2010.7刊行予定)。この他、海外調査として韓国国立中央図書館及び高麗大学校図書館での空襲被害についての予備調査のほか、ベトナム、ホーチミン市への「戦争女性博物館」を訪問し、ベトナム戦争兵士の遺族女性への聞き取り調査を行った。
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