本研究の目的は、アウグスティヌスとの論争に敗れ、西方教会最大の異端と見なされるに至ったペラギウス派神学の思想史的起源は、4世紀のオリゲネス主義神学の中でも特にエヴァグリオスやルフィーヌスに代表される一連のオリゲネス主義にあるのではないかとの仮説テーゼを立て、これを可能な限り検証しようというものである。 以上の研究目的遂行のためには、まず、エヴァグリオス、ルフィーヌス、ペラギウスとその弟子たちに関する、思想史的関連の前提となる歴史的事実関係を確認、確定しておく必要がある。その上で、ペラギウス派は、ルフィーヌスやエヴァグリオスの思想をどの文献からどのように継承したと考えられるのか、文献学的、思想史的関連を検証する必要がある。こうした検証を積み重ねることによって、最終的には、ペラギウス派の思想史的起源は、彼ら独自の異端的見解そのものにあったというよりはむしろ、既に存在していたアクイレイアのルフィーヌスやエヴァグリオスをはじめとするオリゲネス主義者の思想であったとの仮説テーゼを検証したい。仮に、もしもこのテーゼ自体に問題があり、ペラギウス派の思想史的起源について他の可能性が出てくるならば、仮説テーゼを誤りであったと結論づけることも可能であり、もしくは大きく修正する形で新たなテーゼを導きだすことも可能であろう。
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