研究第一年目にあたる本年度は、『朝鮮史』研究会を新たに組織し、20世紀初頭期、植民地時代朝鮮における近代日本学術の展開について、基本的諸問題の整理に努め、18〜19世紀の自他認識の変容と翻訳語ネットワークについて検討するための課題の摘出を行った。この研究会には、本学教員の他、韓国高麗大学校からも研究者を招聘して、当該テーマに関わる韓国側学術の動向について報告を依頼し、意見交換を行った(研究会は全体で合計4回開催)。また、既に組織されている東アジア思想文化研究会においては、朝鮮王朝後期思想史・清朝思想史研究の現況把握を行い、徳川思想史との共時的展開のための課題を整理した(合計10回開催)。これらに基づき、単著『自他認識の思想史』の刊行(2008年11月、有志舎)を行ったほか、韓国語版での『東アジアの自他認識』刊行準備(2009年4月刊行予定、ソウル論衡社)、『東アジアの思想と文化』2号刊行(2009年3月)、『季刊日本思想史』刊行準備(2010年3月刊行予定、ぺりかん社)を行った。同時に東アジア宗教文化学会(2008年8月釜山東義大学校で開催)、東アジア若手研究者合同研究発表会(2009年2月中国北京日本学研究センターで開催、これには本科研費は用いていない)にそれぞれ副会長・基調講演者として参加し、本テーマに関わる報告・韓中研究者との意見交換を実施した。以上から、当該テーマの東アジアにおける最新の研究現況が明らかとなり、今後の研究課題が明確となった。科研費はこれらの研究推進のための書籍購入・外国旅費・研究者招聘に用いられたが、所期の目的を十分に達成したと考えている。
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