日本画材料の近代化の足跡について、これまで行ってきた画材店の「商品目録」(現在のところ上限が明治42年)調査に加えて、「内国勧業博覧会出品目録」を通覧調査して該当項目を抽出整理した。これによって、未解明であった明治10年から明治36年における画材開発の動向の一端を知ることができた。 近代の人造岩絵具の開発については、明治から戦前に活躍した日本画家の橋本関雪の遺品顔料について、京都市の橋本関雪記念館の協力を得て科学分析を含む総合的な調査を行い、戦前期の画材状況の一端を実資料から把握した。また、京都の老舗画材メーカーである放光堂ならびに上羽絵惣における調査から、明治後期から昭和初期にかけての岩絵具開発事情を知る文献や聞き取りを得ることができた。さらに、人造岩絵具と七宝釉薬との関連性を探るべく京都市の並河靖之七宝記念館との共同調査を開始した(調査結果の一部を平成21年度に学会発表する予定)。 近代和紙の開発については、文献から先行研究の整理を行った。また、宍倉ペーパーラボにおいて、和紙の基本的な製造法や繊維分析法についての情報収集をした。 近代岩絵具の中国への波及については、中国の主要美術大学である広州美術学院(中国・広州市)と中国美術学院(中国・杭州市)を訪問し、授業や施設を見学調査するとともに大学教員との情報交換を行った。広州美術学院では、日本側の状況を講演会で報告した。また、広州市、杭州市、上海市の画材店を訪問して岩絵具の輸入と普及の状況を調査した。
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