研究概要 |
本研究課題に関連して、平成21年度には以下のような研究成果をあげた。 (1)J. -P. Migne, ed., Patrologiae cursus completus, Series Latina, 221 vols., Paris, 1844-1890. のCD-Rom版を使用した検索により収集例を増やしてリスト化を進めた。とりわけ「三位一体」における父なる神と子なるキリストの関係、キリストの受肉における神性と人性の関係、人間の創造における創造主と人間の関係、神とその僕の関係等という本研究の関心の所在に合致する事例を多数抽出し、資料としてまとめた。 (2)とくに、具体的な作例として13世紀半ばにイギリスで制作されたヨハネ黙示録写本『グルベンキアン黙示録』(リスボン、グルベンキアン美術館所蔵MS L. A. 139)に含まれる子羊が第6の封印を解く場面に関するベレンガウドゥスによる黙示録註解のテクストに施された挿絵に見られる印章のモティーフに関する考察を行い、平成22年3月20目に日仏美術学会例会で研究発表を実施した。従来の研究ではこの印章のモティーフはその図像的意味が解き明かされていなかったが、この発表では、印章のメタファーとの関連から、三位一体の父と子および神とその僕である信徒の関係、キリストの受肉と受難の証拠、終末における神との「顔と顔とを合わせての」出会いの約束と結びつく要素としての新たな解釈を提示した。
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