本年度は、研究代表者および分担者が、原版についての海外現地調査を行った(2008/9/22-10/3分担者は現地での参加)。パリのルーヴル美術館・カルコグラフィー(9/24-26)とナンシーのロレーヌ歴史博物館(9/28、29)において、ポータブル・マイクロスコープを用いて原版調査を行った。マイクロスコープによる原版の詳細な研究はこれまでほとんど行われていないため、本調査は調査の方法そのものを探る試行的なものとなった。ルーヴル美術館・カルコグラブィーでは、室長フランソワ・ボドカン氏の全面的な協力により、アブラアム・ボスおよびの原版をさまざまな方法で調査し、一応の手順を確定することができた。それを踏まえ、ロレーヌ歴史博物館では、ベネディクト・パスクおよびアストリッド・マリック両氏の協力を得て、ジャック・カロおよびセバスチャン・ル・クレールの原版を調査した。両機関の調査において、これまでには知られていない興味深いデータの収集を行うことができ、とくにナンシーでは現資料記述の誤りも指摘した。ただし、ナンシーでの調査は日数が限られていたため、十分に行うことはできなかった。また、研究代表者は、金沢美術工芸大学発展研究の調査出張の折に、長崎県のハウステンボス美術館・博物館所蔵のレンブラントの原版を調査した(2009/2/7)。この調査の様子は同美術館のウェブサイトに掲載されている。さらに、防蝕被膜再現のための材料を揃えて実験に備えるとともに、ウェブ構築のための情報を収集した。
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