研究代表者はこれまで、一貫して「江戸の花鳥画」に対する従来認識の再考を目的とする研究に従事してきた。そしてこれらの研究を通じて、次なる問題として今日<写生画派>に括られる円山四条派や森派、および秋田蘭画派などが、いずれも「近代日本画」創造期の明治時代に意識的に見出され、再評価されたことに改めて思い至った。本研究ではそのような視座に立って、明治の近代日本画、とくに江戸時代以来の「写生」の問題を、リアリズム表現として再解釈しようとした画家や作品群から遡及し、現代の美術史研究にまで影響を及ぼしている江戸の写生画に対する理解を、再検証することを試みる。そしてこの検証は逆に、江戸時代当時では高く評価されながら、明治以後は久しく存在が忘れられていった写生画家や画派についても、同時に再考察を加えることとなるであろう。
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