星曼荼羅(北斗曼荼羅)の構成要素である黄道十二宮は西洋占星術で独自の発展を遂げ、その発展のある段階で仏教の中に取り込まれた。その状況には不明な点が多く、星曼荼羅の構成要素としての黄道十二宮の図像の特徴を理解する上で、西洋の黄道十二宮の図像との比較検討は必須の作業となる。この観点から、我が国で星曼荼羅が盛んに制作されていた平安時代後期から鎌倉時代前期(12〜13世紀)とほぼ同時代の西洋における黄道十二宮の遺例であるサン・ミニアート・アル・モンテ教会(イタリア、フィレンツェ)、サン・ジョヴァンニ洗礼堂(同)の床面装飾および、サン・ラザール大聖堂(フランス、オータン)、サン・マドレーヌ聖堂(フランス、ヴェズレー)のタンパン装飾として表現された黄道十二宮の図像を調査し、写真撮影をおこなった。星曼荼羅の構成要素としての黄道十二宮の図像が成立する上で、西洋の黄道十二宮がどのように影響したかを具体的に解明するためには、仏教美術と古天文学との融合について、より多角的に検討を加える必要があり、継続調査する。 星曼荼羅の画像データベース作成の基礎となる映像資料の収集のため、和歌山・親王院所蔵の星曼荼羅を調査し、写真撮影をおこなった。この作品は鎌倉時代に制作されたと考えられる円形式の作品で、供養菩薩と火舎を伴う独自の構成が認められる。他の円形式の作品や熾盛光曼荼羅との比較も含め、密教絵画の中での位置づけについても考察を続ける。 未だ調査ならびに写真撮影について許可を得ることができていない作例については、引き続き所蔵者へ交渉をおこない、許可が得られるよう努力する。
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