本「研究の目的」は、『環北太平洋北方圏の先住民文化について、その現代的意義をモチーフとした空間造形』の研究課題名からもわかるとおり、対象地域の先住民に古くから伝わる思想から、彫刻的空間造形の創作研究を進めている。提出済みの「交付申請書・研究実施計画(1)〜(3)」に記載した3点に照らし、平成20年度の研究実績を報告すると、具体的には以下のとおりである。 (1) 北海道内及び東北地方のフィールドワークでは、研究拠点である北海道内のアイヌ文化のほか、新潟県奥三面村跡や青森県白神山地や下北半島の森など、マタギ集落で営まれていた狩猟採集文化に関する現地聞き取り調査を行った。この他に、東北地方に古くから伝承されている神楽で舞われる獅子舞や山岳信仰について既存の民俗資料収集を作品イメージの構想のために行った。 (2) ロシア極東アムール川流域の先住民(ウデヘ、ナナーイ)の文化について現地調査し、(1)との比較を行った。この他、国境を越えて関連した特徴を持つ北方先住民の文化を比較探訪しながら、作品イメージの創出としての「環北太平洋における弧の空間」の西端である本邦東北地方から北海道、ロシア極東と東端に当たる北米北西海岸先住民の神話など、既存の資料収集からも作品構想を行った。 (3) 「環北太平洋における弧の空間」として弓の両端の間を結ぶオホーツク海、サハリン、カムチャッカ、ベーリング海、アラスカ北西部から南東部までの地域に生活する先住民についての資料収集については、研究初年度にあたり、(2)で述べたとおり、ロシア極東アムール川流域の先住民について現地調査を行うとともに、アラスカ、カナダにまたがって先住するイヌイットや北米北西海岸におけるハイダ族の文化についての人類学分野への研究会参加や資料収集を行った。 これらの実績については、平成20年11月に行われた美術教育学会・高知大会にて、その成果の発表を行った。内容は、本研究の作品イメージ創造のための空間造形シミュレーション作業である。
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