前年度に引き続き、研究目的でもあり、研究課題名でもある『環北太平洋北方圏の先住民文化について、その現代的意義をモチーフとした空間造形』についての資料収集と作品イメージの構築作業について、当該年度の研究実施計画に沿って以下の通り行った。 (1)ロシア極東の島・サハリン北部地域における先住民ウィルタのトナカイ遊牧の現場に滞在し、映像記録撮影や聞き取り及び作品素材資料の収集等の調査を行った。 (2)北海道内(旭川、日高、浦河、北海道大学、北海道立北方民族博物館)及び東北地方<青森県西目屋村内の白神山系一帯>を中心に、アイヌ及びマタギの狩猟文化についての体験及び聞き取りと資料等の調査を行った。 (3)(1)(2)で行った調査により、狩猟採集文化が持つ動物と人間の関係についての思想が、自然環境との関係において破壊的な仕組みを抱え込む現代社会の現状を考え直すイメージを想起することができた。これを、作品の構想として構築していく作業及び空間造形作品の展示シミュレーションを以下の発表場所を利用して行った。作品発表は、北海道大学(総合博物館と大学院国際広報メディア研究科)の協力により行った旧札幌農学校二農場のサイロ(重要文化財)空間を素材とする展示を行った。シンポジウム(「第25回北方民族文化シンポジウム」、北海道大学公開シンポジウム「地域発・草の根文化の時代」)や美術教育学会にてこれまでの調査と作品制作の途中経過をまとめた発表を行った。 (4)状況に応じた実地制作として各調査地にて作品の素材となる様々な場面を撮影し、その一部を(3)の学会発表や作品発表として展示構成した。
|