本研究は、1970年代に入るまでは低級文化と見なされていたコミックスの文化的認知について、芸術、教育、文化的機構などとの関係から考察するものである。まずコミック作家が経験した文化的闘争の最古の一例として、19世紀スイスの作家ロドルフ・テプフェールの経歴をとりあげた。かれの理論的テクスト等の分析から当時におけるコミックスの文化的認知の困難さとその背景を明らかにした。また、現代の日本とフランスについて、コミックスと諸芸術の関係、子ども観、教育制度などの違いをふまえ、文化的認知度をはかるための有効な方法論を吟味するとともに、今後の国際的なコミックス研究のありかたについて提言も行った。
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