本研究では欧州の木彫について調査・研究を行い、日本の木彫表現との比較を行うため、5年間の研究期間の内、4回の現地調査を予定しているが、平成22年度においては、その第3回目の現地調査として、スペイン王国、イタリア共和国、フィンランド共和国において現地調査を行った。また、近代の日本の彫刻家においては、橋本平八(1897-1935)や辻晉堂(1910-1981)について実際の作品を通して検証を行った。 スペイン王国においてはマドリッドでプラド美術館、また、マドリッド近郊のバリャドリードのサン・グレゴリオ美術館(国立彫刻美術館)では特にグレゴリオ・フェルナンデス(Gregorio Fernandez 1576~1636)について作品《横たわるキリスト》を中心として実見調査を行った。バルセロナではカタルーニャ美術館、バルセロナ現代美術館、バルセロナ大学では彫刻担当のマニェル・アラメンディア教授、ハウメ・ロス・バリュベルデュ教授と意見交換を行い、併せてスペインでの木彫の現状について聞き取り調査を行った。 イタリア共和国ではトリノにおいて市立近現代美術館でアルトゥーロ・マルティニ(Arturo Martini 1889~1947)の作品について実見調査を行った。ミラノではルチャーノ・ミングッツィ美術館ではルチアーノ・ミングッツィ(Luciano Minguzzi 1911~2004)、アッシジではペリクレ・ファッツィーニ美術館、ローマではヴァチカン美術館において実見調査を行った。 フィンランド共和国においてはヘルシンキでアテニューム美術館での実地調査を行った。 また、調査と併行して、研究内容のひとつである木彫に関する造形的試みについて、実際に木彫制作を通して検証を行った。
|