本研究では欧州の木彫について調査・研究を行い、日本の木彫表現との比較を行うものである。周知の通り、ヨーロッパは古代から石の文化であり、彫刻においても、素材は大理石などの石またはブロンズが中心であり、木を用いた彫刻は前者に比べると少数である。 造形的手法に関して比較すると、日本の木彫が鋸の活用による強い面の意識を持っているのに比べ、欧州の木彫は石材に対するアプローチと酷似している。 日本では古くから、木による優れた仏像・神像彫刻を生み出してきた歴史を持ち、木彫に関し豊かな文化を持っているといえる。それは優れた刃物を早期に確立したことによるところも大きいが、木に特化した独自の文化ということができる。 本研究では、ヨーロッパでの石の文化の中で成長した木の表現方法を調査・研究し、日本の木彫と対比することにより、日本の木彫文化を再認識し、見直すことができると考える。また、自分自身が、研究者・制作者として、木という素材による、欧州と日本文化の相互の造形意識の融合により、新しい造形的試みを推進することを見据えている。 研究方法としては、欧州における木彫について、現地調査を行う。5年間の研究期間の内、4回の現地調査を行う予定である。また、調査と併行して、研究内容のひとつである木彫に関する造形的試みについて、実際に木彫制作を涌して検証を行うものである。
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