1.リヒャルト・ワーグナ一研究の基本文献である『コジマの日記』(Cosima Tagebucher)の解読翻訳を進め、普仏戦争からドイツ帝国樹立へ至る時代の同時代資料を読み込むとともに、ワーグナー(夫妻)が渉猟した膨大な書物の世界を跡づけることにより詳細な注解を作成した。その結果は『コジ・マの日記』第2巻(1870年6月〜71年10月)として東海大学出版会から上梓される(2009年6月刊行予定)運びであり、音楽学、ドイツ文化論はもとより、ヨーロッパ19世紀研究に貴重な一石を投ずるものと信ずる。 2.ワーグナーがその芸術目標とした「楽劇」への移行期に書かれ、芸術史上「モデルネ」への重要な一歩を記したロマン主義オペラ《ローエングリン》の対訳・注解を刊行する(2009年度に五柳書'院より上梓する予定)ための予備的な基礎作業として、同作品の文献学的テキスト校訂を行った。 3.ワーグナー作品の(テクストと音楽双方にわたる)韻律の問題を《ニュルンベルクのマイスタージンガー》を例に研究し、日本音楽会のシンポジウムで共同発表した。
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