研究概要 |
本研究は,土地に関わる記憶が人々のうちに形作られ,維持され,また変容されてゆく過程で芸術がどのように関与し,その際にいかなるメカニズムが作動しているかを解明し,ひいてはそれが人々の共同体意識やアイデンティティ意識の形成へと結びついてゆくあり方を明らかにしようとすることを目指すものである。近年、土地やその歴史に関わる「集合的記憶」のあり方や、それが文化の形成の中で果たす役割がホットなトピックとなっているが、土地を舞台や題材にした文学、絵画、映画、音楽等の芸術はそのような記憶が形成されるにあたって重要な機能を果たしているはずであるにもかかわらず、その包括的な研究はこれまでなされてこなかった。本研究では、とりあえずの研究の手がかりとして、文学散歩や映画のロケ地めぐりといった、作品にゆかりの土地をたずね歩く行為に焦点をあて、作品の内実が現実の土地の表象に重ね合わせられることによって、その表象を重層化させたり変容させたりするメカニズムの解明を目指す。
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