本年度は総合譜の訂正、またその総合譜に基づきDVDを作成した。曲目は長唄『供奴』である。 総合譜とは三味線、唄、囃子、舞踊までが1つの譜面で総合的にかきあらわしたもので、これはこの研究以前にない画期的な譜面である。 その意義は 1、古典長唄が舞踊も含めてスコア化されたものであること 2、譜面を専門家以外の者も読譜できるように舞踊以外の三味線、唄、囃子を全て共通して五線譜で記したこと 3、従来は個人の手書きであった舞踊の振書きを、記号化し統一したこと 4、三味線音楽(三味線、唄、囃子)の時間軸と、舞踊の時間軸を統一して、どの音楽の時にどのような振りであるかが分かるようにしたこと 5、囃子の打物のパートは従来陰囃子(大太鼓など)を口伝でのみ伝えてきたが、この総合譜には陰の囃子の具体的な手組も記したことなどである。 本年度はこれに加えてDVDを作成した。 『供奴』という曲を研究中に口説き部分の「おはもじ~露の化粧の初桜」の部分の振りが伝承されていない事が判明した。そのためにこのDVDには舞踊の入らない素の演奏と、舞踊の入ったものとを収録した。両者ともに長唄『供奴』の総合譜に基づくものである。その意義は以下の通りである。 1、DVD化によって譜面と照らし合わせて具体的な演奏、舞踊を見ることができること 2、DVD化によって本来邦楽の演奏家、舞踊家に許される自由度があるが、今回はより基本に近い形を収録したこと(これは後世に残る貴重な資料となる)
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