1.内容 平成21年5月および平成22年3月に、アメリカ、ロサンジェルスのGetty Institute Research Libraryにて「David Tudor Papers」の第2回・第3回めの調査をおこない、チューダーの使用楽譜、図形楽譜のリアリゼーションのために残している大量のメモ類、チューダーに宛てられた作曲家等からの書簡、S.Wolpeのもとでの学習期のノート類を閲覧し、記録した。これらの調査から得られたデータと、学術論文、書籍等から得られた情報を、平成20年度に構築したデータベースに随時追加した(現在、情報件数は約2000件)。このデータベースを用いて、チューダーの演奏履歴(演奏曲とその回数)を整理・解析し、その結果を福井大学教育地域科学部紀要に論文として公表した。 2.意義と重要性 チューダーが演奏した曲目を、有名作曲家に限らず網羅的に把握することは、彼の演奏活動の実態を明らかにするうえで最も基本的な作業である。この分析結果をもとに、彼の作品選択の基準や傾向についてさらに考察を進める予定である。また、書簡や学習記録の調査は、彼の音楽活動をとりまく環境を推測し再構築するための基礎作業である。さらに、今回の調査で収集したチューダー自身の楽譜やメモは、彼の演奏実践のプロセスを明らかにするために欠かせない重要資料であり、その詳細な分析とその考察は、先行研究を参考にしつつ、平成22年度にひきつづき行う予定である。
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